第45号「ローテクの楽しみ」古瀬浩史

第45号「ローテクの楽しみ」2010.6.28配信

 仕事にはパソコンや携帯端末が欠かせない。どちらかというとIT系には関心がある方なので、新しいものにも飛びつきがちである(iPadなど、今にも買ってしまいそう・・)。一方、企画を考える時は、どうしても紙とペンといったローテク道具がないとままならない。シンプルな企画書なら手書きで仕上げてしまうことが多いくらいだ。

 ところで、自然体験もローテクの方がいい時がある。僕はもともとダイビング・インストラクターなので、近代的な道具を使う自然体験を活動の中心にしてきた。いまでもスクーバダイビングは好きで、時間と予算が許すなら最新式のデジカメなぞ持って潜りまくりたいところである。
ところが、3点セットだけでスノーケリングしたくなることもしばしばである(CNAC的には浮力も入れて4点セットで・・と言うべきところだが・・)。船で大物釣りに出るのも楽しいけれど、防波堤から前時代的な道具で釣りをするのが何とも言えずに楽しい。ジェットスキーは爽快かもしれないが、シンプルなボードで遊ぶ波乗りの楽しみは他のものに代え難い。

 道具は人間の能力や機能の何かを拡張するものだと思う。パソコンは脳の拡張、望遠鏡は目の拡張、SCUBAは肺の機能の拡張・・ この拡張のレンジが広ければ飛躍的な能力を獲得でき、まったく新しい世界に身を置くことが可能だ。自然の理解という面でも意義が大きい。一方、ローテクの自然体験の醍醐味はなんだろう。それは外へと拡張することでなく内省、内観することではないか。ローテクでシンプルな道具な方が、自然とのチューニングによって、自ずと内観が進むのではないか・・そんなことを考えてみた。

 思えば、企画という仕事も、ある部分から先(一通りのインプットが進んでから)は内向きの作業である。できれば、静かな海辺か何かで、ローテク自然体験をときどき楽しみながら、ローテクな道具だけで仕事ができたら素敵なのだけれど・・・

CNAC理事 古瀬 浩史・株式会社 自然教育研究センター 取締役

2010年06月28日