第23号「北の海から思うこと」大塚英治

第23号「北の海から思うこと」2008.8.29配信

 お盆が過ぎて、ぐっと寒さが増しています。8月22日には北海道のてっぺん稚内で115年ぶりに観測史上最低気温1.5℃を記録しました。温暖化といわれていますが、どうも気象のムラが気になりますね。

 先日、海の温暖化をテーマに講演会がサミットの行われた洞爺湖で行われました。海洋環境で見られる温暖化の影響として、北の「流氷の減少(北海道オホーツク流氷科学センター所長:青田先生)」、南からは「サンゴの白化(琉球サンゴくん:入川暁之さん)」が紹介されました。北海道の流氷は南限に位置し「地球の体温計」といわれています。少し温度が上昇するとすぐに流れてこなくなるそうです。年々量が減ってきています。サンゴの白化は高水温などのストレスで共生藻を失うことによって起こります。ちなみに今年は国際サンゴ礁年です。流氷とサンゴの共通点として、どちらも地域観光の大きな役割を持っていることです。沖縄では過剰なダイバーを受け入れてしまった地域のサンゴ礁がダメージを受けていること、北海道の知床半島は世界遺産となり多くの観光客が押し寄せため、ヒグマとの遭遇やごみ、焚き火などが問題となっています。

 CNACや私たちの体験活動の目的のひとつに、海洋環境への理解と保全があります。観光ではどうしても表面的な美しさに目を奪われてしまいがちになり、環境を食い物にしてしまうことが時として見受けられます。地域資源として環境をとらえた時、地域の方々がその大切さに気づくこと、良質な環境が保たれるように行動することがとても重要です。そして、持続的にその恩恵を地域経済に還元できるような仕組み作りが肝心。

 まだまだ、海の体験活動は夏のアクティビティーとして見られる感が強いようです。リゾートとして海を楽しむのであれば、南の海は確かに魅力的ですが、どうも画一的な海の楽しみ方となってはいないでしょうか?数年前に行政からのヒアリングがあり「北海道の寒い海の体験活動ができるのですか!?」と頭っから言われた記憶があります。でも、北海道でしか楽しめない体験プログラムや地域の課題もあるのです。

 北海道は3つの海(日本海・太平洋・オホーツク海)があり、全国の12.5%にあたる4,402㎞の海岸線、水産物の水揚げは25%を占めていますから、ポテンシャルは高く、様々なケースが考えられます。

 「海」は誰もが楽しめる場所であるべきですが、「山や川」と比べてマナーやルールが十分とは言えません。海洋基本法、エコツーリズム推進法が施行された今、「海」の環境保全や地域振興が進むことを期待しています。

CNAC理事 大塚英治・ほっかいどう海の学校 事務局長

2008年08月29日|キーワード:観光,海,体験