第13号「江の島で真珠がとれました!」松本富士也

第13号「江の島で真珠がとれました!」2007.10.26配信

 江の島ヨットハーバーの私たちの母船“みなも”の桟橋付近で緋扇貝とアコヤ貝をB&G江の島海洋クラブの親子達が育てていますが、今回綺麗な真珠が取れました。夢物語が実現して、とても感激しているところです。

 CNACの田中克哲理事の“ふるさと東京を考える実行委員会”のオイスターガーデン構想に共鳴して、ご指導を仰ぎながら建設以来40余年のヘドロが蓄積している江の島ヨットハーバーを綺麗にしながら、子ども達にその生育を観察し、世話をさせてみたいと始めた事ですが、だんだん夢が広がり、この子達の卒業記念に自分自身が丹誠込めて育てた真珠を送りたいと考え、核の入ったアコヤ貝の入手を御願いしました。

 ハーバーを綺麗にしようと一生懸命子ども達が作業をしている姿をみて、大人達も海を汚すことに注意を払い、出来ればハーバー中のヨット桟橋全部に貝を育てていく活動にしていきたいとの思いは、残念ながらハーバーは貝の育成場所ではない!目的外使用である!とのハーバー管理者、神奈川県の見解で、大きくみんなに呼びかけ、水質浄化運動にすることが出来ず、細々と無許可のクラブ活動でやっているのが現状です。

 子ども達は一生懸命、月2回ヘドロで汚れ、蛸に襲われる貝類をブラシで綺麗にし、併せて貝を入れた袋に同居しているいろいろな生物の勉強もしました。

 そして今年のXマスにはみんなに一つずつ真珠をプレゼントすることが出来ます。本当は新聞社に連絡して、江の島の子、湘南の子ども達に夢を与えるニュースを流したいのですが、そうすると黙認してくれている管理者が困るでしょう。お役所仕事もルールで縛られているとはいえ淋しいですね。

 私の人生は、海の狭い一角にマークを打って、早さを競うヨットレース中心でしたので、いろいろな外国の海に行っても、本当の海の魅力に接する機会は殆どありませんでした。そんな私が皆さんに接し、CNACの仲間入りが出来たのは、代表理事の海野さんと小笠原への船の旅でお会いしたことからです。

 日本人は世界中の魚を食べまくるだけで、海は危険なもの、生活には無縁なものとしか思っていません。水泳はプールで習うだけで海や川とは無縁です。海の素晴らしさ、命の源である海を、今の親は知りません。その海の持つ魅力を核家族で少ない子どもを小さく囲んで育てていくのではなくて、親子が揃って、おじいちゃん、おばあちゃん、よそのおじさんおばさんと一緒に大きなフアミリーの中で育っていって欲しいとの願いではじめた江の島海洋クラブですが、幸い多くのよそのおじさんおばさん、お兄ちゃんお姉さん達の支援を得て、スノーケリング、セーリング、カヌーイング、ライフセービング、海の作品作り、わかめの育成、ヨットの自作、ビーチコーミングそして貝の育成観察など随分幅広い活動になりました。

 人との出会い、人の輪、協力は大変有り難く嬉しいことです。これも海を通じたビッグフアミリーあり方です。

 そしてもう一つの活動、海はバリアフリー、総ての人に平等に接してくれることの実践として、誰でもが簡単にしかも安全に操縦できるアクセスデインギーという小型ヨットを使って、障害者、高齢者、障害児とその家族達にセーリングを体験し楽しんで貰うNPO法人を作り、多くのボランテイア達に参加して貰いながら、週3回ほど活動しています。今年は体験参加者500人以上、会員も100人近くになりました。

 幸いこのヨットの活動を横浜市障害者スポーツ指導者協議会や障害者スポーツ文化センター横浜ラポールの皆さん達と、障害者の屋外スポーツの一つとして発展させていこうとの話し合いも始まりましたが、海洋クラブの親子達にもやがて、海や自然を愛し、人を差別視しない豊かな心の持ち主として、障害者に対する理解や心遣いも学んで欲しいと願っているところです。

 海は広く大きく夢を与えてくれますが、総ての人達に差別なく厳しさも与えます。ヨットの大先輩小澤吉太郎先生の言葉に“海に泣いて見せても、おべっかを使っても、海は静まってくれない”と言うジュニアセーラーへの教えの言葉があります。

 先日の広島での痛ましいヨット転覆事故も、海への甘え、自己過信から生じたものであり、私達は子ども達の安全をしっかり守りながら、海の体験を通じて心身共に魅力溢れる社会人に育てていきたいと念じています。

 余談ですが、船底塗料などで毒性汚染されていないか心配して食品検査までしたうえで、子ども達と緋扇貝を食べました。とてもおいしかったです。

NPO法人セイラビリティ江の島 松本富士也

2007年10月26日