第70号「横浜のアマモ場再生から10年」木村尚

第70号「横浜のアマモ場再生から10年」2012.7.27配信

アオリイカの卵

横浜市金沢区にある海の公園。今年も、アオリイカの産卵が見られ始めた。
活動当初、広がりつつあるアマモ場にアオリイカが産卵してくれたのが、東京湾内湾では30年ぶりのことで、参加者一同狂喜したものだったが、今では恒例のことになりつつある。大海に小石を投げるような小さな活動が、たくさんのいろいろな能力を持った参加者が協力するようになり、いろいろなことができるようになっていった。こうしたできることが増えていった結果が、象徴的にこうした産卵に繋がっていったのではないかとすら思える。

もちろん、たくさんの紹介したい協力者たちの活動もあるのだが、今回はその一部を紹介したい。東京湾の環境が悪化すると同時に漁獲高が減少に向かっていったが、現在もその状況は好転しているとは言い難い。しかし、唯一、漁師たちが喜んでくれているのが、このイカの漁獲である。コウイカ、シリヤケイカ、アオリイカのアマモ場への産卵は漁師たちにとっても喜ばしいことのようで、アマモ場に対する理解が急激に広まっていくことで漁師からの協力が数多く得られるようにもなっている。もう一方は釣り人である。秋には、このアオリイカが一晩に20ハイも釣れることもあるそうで、釣り人たち、あるいは遊漁の方々からの活動に対する協力も数多くえられるようになってきた。こういう小さな積み重ねとなるような成果が、小さな波紋を大きくし、アマモ場再生活動の渦が大きくなっていった。

今年7月8日には、金沢八景にある瀬戸神社でアマモの神事が行われる。この神事
が復活して今年で2年目となる。環境が悪化しアマモ場が消失してしまったことで永く
途絶えていた神事だが、昨年(2011年)、アマモ場が拡がり、さらに活動を広げること
で海を良くしていこうという願いを込めて復活することができた。

3人の締込をした男たちが、海に入りアマモを刈り取った後に神殿に捧げ、その後神輿の蕨手に結ばれ、神輿が出発していく。昨年、風にたなびくアマモを見た時は、感動のあまり涙がこぼれてしまった。不覚にもである。こうしたこともまた、地域にアマモが浸透していくことにも繋がっていく。

活動開始から10年、こうしたことも徐々に若手へと世代交代させ繋げていくことで、アマモの街「金沢八景」が地域の住民の誇りとなっていけるようにしていきたいと考えている。

NPO法人海辺つくり研究会 理事/事務局長 木村 尚
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2012年07月27日|キーワード:アマモ