第138号「ウニと学び」2018.3.31配信
私の暮らす北海道の小樽市や積丹半島の夏の風物詩といえばウニ。美味しいのはもちろんですが、早朝、一斉に出漁する様はぜひ一度見てもらいたい風景です。
日本海の北海道沿岸にはキタムラサキウニとエゾバフンウニの2種が生息しており、ホソメコンブを食べて育ちます。
このウニに、地球温暖化の影響が近年みられるようになりました。
温暖化により冬の水温が上昇すると、キタムラサキウニが活性化し、コンブを食べるようになります。その時期がちょうどホソメコンブが芽吹く時期と重なると、育つ前に食べられてしまうので、あっという間に食べつくされてしまいます。季節風が弱く穏やかな冬となったときも要注意です。
春から夏にかけて食べるべきコンブがないウニは身が入らず、漁師さんが水揚げすることもありません。こうなるとウニとコンブのバランスが崩れてしまい、恒常的に海藻がない状態が持続してしまいます。これをウニの食害による「磯焼け」と言います。
また、夏に水温が上昇すると冷水を好むエゾバフンウニは斃死してしまいます。赤黄色でクリーミーな味わいで高値となるエゾバフンウニですが、今ではなかなか見つけることも難しくなっています。
くらしの中で、海の中の環境変化を知る機会は残念ながら少ないのが現状です。
そこで、地場の名産品であるウニを教材に、環境教育を実践してみました。主な項目は次の通りです。
・ウニってどんな生き物→ウニの生態、生きたウニを触って観察、棘や間足、口と肛門
・ウニの好物コンブ藻場と磯焼け→コンブの生態、ウニの食害、磯焼けの原因
・ウニ漁の仕方→漁師さんから聞いてみる仕事
・ウニを食べてみよう→ウニむきは手間がかかっていて高いのは納得、感動的おいしさ。
ウニ漁期は陽気が良くなる6月から8月ですので、屋外プログラムと合わせて実施することでより効果的となります。
参加者からは、そもそもウニの生態を考えたことがなかったので、新たな発見があり面白い。なにより感動的に美味しいとの感想をいただくことができました。
また、漁師さんの漁の苦労や製品化への努力を直接聞くことで、環境変化や地場産業としての課題を学ぶことができた点は、漁村がもつ多面的機能を知る上で大切です。
磯観察で体験できるウニプログラム。
高級食材ではありますが、地元の漁師さんの協力を得て教材とすること、とても良い教材となることがわかりました。なによりユニークな形と美味しさが抜群です。
これからも、海と食卓を繋ぐプログラムを考えていきたいと思います。
CNAC理事 大塚英治 株式会社沿海調査エンジニアリング 代表取締役社長
http://www.cre-poseidon.co.jp/