第98号「広島のアサリ」田中知足

第98号「広島のアサリ」2014.11.28配信

先日、久しぶりにCNAC事務局の港絢子さんから連絡をいただきました。
会費の催促かしら?いやいや期限には間に合わなかったけれど今年は既に払ったぞ!などと思っていると、光栄なことに『うみ*にゅう』コラムのスペースが多少空いているので何か書いてみないかとのお誘いでした。
港さんと初めてお会いしたのはCNAC設立の頃で、我々は同僚として港湾局環境整備計画室(現在の海洋・環境課)森川室長(現理事)のもと繁本さん小野さんなどと机を並べていました。貴重な機会ですので、お言葉に甘えて現在の勤務地である広島地域の話題を少しご紹介させていただきます。しばらく拙文にお付き合いください。

広島地域に瀬戸内海が姿をあらわしたのは今から6千年前まで続いた縄文海進によってのことだそうですが、以来地域の人々は瀬戸内海の豊かな恵みを受けながら暮らしを続けてきました。一方、戦後になると瀬戸内海の水運の利便性などが注目されて多くの工業地域が形成され、現在でも地域経済を支える重要な役割を担っています。私たち港湾行政に携わる者は、瀬戸内海の豊かな自然との調和を図りつつ地域産業の発展に必要な港湾機能の充実を図っていきたいと考えています。

その方策の1つとして中国地方整備局では30年前から港湾整備から発生する土砂を浅場の再生に活用する取り組みを進めています。しかし、新たに造られた浅場に真の命を吹き込むためには、これらを更に育てる地道な取り組みが必要になります。その役割を担って下さっているのが地域の15漁協などで構成される「広島県東部アサリ協議会」です。協議会では、漁業協同組合のみなさんと市民のみなさんなどが協同して各干潟の保全活動を行うことを目的とし、干潟の耕運や食害対策を行うとともに、干潟をフィールドとした環境学習や国際交流などの取り組みを推進されています。協議会の活動の様子は、当コラム第83号でもNPO法人瀬戸内里海振興会の坂田勝総括主任研究員により紹介されています。

また、協議会の吉岡照明会長には、本年6月に廿日市市で開催された「中国地方藻場・干潟サミット」において協議会の活動の意義や魅力、苦労や工夫について臨場感あふれる基調報告をしていただき、続いて行われた廿日市市長・笠岡市長・尾道市長・江田島市長・周南市長によるパネルディスカッションに大きな方向性を示していただきました。

なお、これら協議会の日頃の活動に感謝するため、本年7月には「広島県東部アサリ協議会」に海事関係功労者表彰(中国地方整備局長表彰)を受賞いただました。

私たちとしては、今後とも協議会のみなさんとの連携を深めつつ、例えば事務所職員による干潟の耕運体験を企画するなどして浅場に対する理解を一層深め、引き続き瀬戸内海の豊かな自然の保全と港湾振興の調和を図り、地域創生を推進していきたいと考えています。

国土交通省 中国地方整備局 広島港湾・空港整備事務所長 田中知足
https://www.pa.cgr.mlit.go.jp/hiroshima/

2014年11月28日|キーワード:干潟