第97号「NPO法人PACIの歴史、成果と課題」菅原茂

第97号「NPO法人PACIの歴史、成果と課題」2014.10.28配信

ひとりでも多くの人にイルカ・クジラそして海の魅力を伝えたい。子どもたちを安全に海へ案内できるインタープリターの養成をしたい。そしてインタープリターが独立しプロとなり、世界にネットを築いてほしい。そんな3つの想いを理念としてNPO法人PACI・国際海洋自然観察員協会を設立しました。

1998年6月三宅島でドルフィンスイムプログラムを開始し、2000年6月ジャック・モイヤー先生に「イルカガイド入門」を書いていただき、これを教則本とし2002年6月東京都のNPOとして設立しました。

東京コミュニケーションアート専門学校を始め、大阪、福岡、名古屋、仙台の提携校含めPACIインタープリター養成講座を開始しました。今までに受講者約5,200名。うち約1,000名が水族館へ就職しました。

現況、日本動物園水族館協会加盟の水族館63施設のうち57の施設に卒業生スタッフが活躍しており、その数546名になっています。水族館は業界年商規模約350億円と、小さい業界です。ただし、日本動物園水族館協会加盟の水族館に訪れるお客様の数は年間3千2百万人(2012年度)、日本の人口1億2千万強とすると、毎年4人に一人は水族館に訪れる計算となります。また、日本で一番人を集める施設、東京ディズニーランド(&シー)の2012年度集客数は2千7百万人。何と業界すべてでは水族館が上回る。水族館は国民的な施設です。

だから、しっかりした人を送り込まねばならない責任と、環境教育や生物多様性の視点を持って業界に入り、情報発信してゆく、そんな人を育てる重要な役割を持っています。この面で、なにがしかの貢献ができていればと創意・工夫をしながら養成講座の運営に当たっております。卒業生の活躍分野は自然のフィールドにも広がり、沖縄、西表、石垣、屋島、小笠原、三宅島、御蔵島、知床…などでも活躍しております。オリジナルのフィールドも開拓しました。石川県能登島です。野生のイルカが棲みつき、ドルフィンスイムを主体にウミホタルウォッチングなど里海里山・自然体験プログラムを構築しました。今年で10年になります。
地元・日本3大火祭りのミニチュア版をネイチャーキャンプに取り入れ、お客様さまから好評をいただき、ウミホタル・ナイトスノーケリングも日本エコツーリズム協会のグッドエコツアーに登録されました。

ただし、暗雲です。今年はメインのプログラム・ドルフィンスイムにおいてイルカとの遭遇率が50%もしくはそれ以下になってしましました。今までに、定着していた「片根の入り江」から、どうやら外洋(能登沖・湾内なのですが)へ自由に遊泳しています。野生のイルカですから当たり前なのですが…こうなるとドルフィンスイムは技術的に難しいです。

でも、仕事とは課題を解決すること、と言われます。
来年は、また新たな挑戦です。輝かしい明日へ向けて…

これまでの活動を通して、CNACはじめ多くの関連機関の皆様には、大変お世話になっております。この場を借りて厚く御礼申し上げます。今年も全国のインタープリターを目指す若者が安心して活躍できるフィールドの構築、業界の発展に少しでも貢献したいと考えております。
今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

NPO法人PACI・国際海洋自然観察員協会 代表理事 菅原 茂
http://npo-paci.com/

2014年10月28日