第174号②「見える風景が特別に~体験学習や環境教育の根本とは~」2021.3.31配信
私は、いわゆる「地方の田舎」の山育ちである。
家の目の前には畑が広がり、通りを少し下れば川が流れ、遠くを眺めれば山が視界をふさぐ。商業施設などは近くになく、カラオケすらも小中学生が行けるような距離には全くない。遊ぶときは友達の家で当時流行っていたTVゲーム。たまに近所の川で川遊び。子どもながらに周りには何もないなぁと思っていた。
そうではないなと感じ始めたのは、大人になり、県外の方と交流する機会が増えてからだ。
「今日は桜島が大きな爆発をした」と何気なく伝えればとても心配され、「親戚とお米を作っているから、お米を買ったことがない。」と言えばうらやましがられた。「時期が来れば田植えも稲刈りも手伝いをさせられるから大変」と言えば体験してみたいと返された。
私にとって当たり前のことが、他の人にとっては特別な事であったことを実感し始めた。
現在勤めているNPO法人に入社してからは、より一層「自然以外何もない」ではなく、「自然っておもしろい」ということを知ることができた。
当たり前のように眺めていた錦江湾に深海があるということ。その深海には鹿児島ではじめて発見されたサツマハオリムシという生物が生息していること。サツマハオリムシだけでなく、湾内にはあらゆる海の環境がそろっており、多くの種類の生物もいるということ。絶滅危惧種であるクロツラヘラサギも越冬のために渡り、水辺の生き物を採餌していること。などなど。
とある地質の研究者は、私の住まいから徒歩5分ほどの地層を眺め、これがすごいのだと目を輝かせていた。
身近すぎて関心がなかったが、身近だからこそ詳しく知ってみると、見方が全然違ってくる。
自分の住んでいる場所がどんなに特別な場所なのか、子どもの頃の私が知っていたら、もっと違う過ごし方をしていたのではないかと悔やまれる。
鹿児島に限らず、どんな地域にも「ここにしかない」というものがあるはずである。ぜひ、一度地元を見つめなおし、自慢できるものがないか探してみてほしい。
自分では思ってもみないものが、実は他の人にとってはすごく特別でうらやましくなるものかもしれない。
NPO法人くすの木自然館 事務局スタッフ 入社3年目 黒江 恵美
http://kusunokishizenkan.com/