第216号「都市部開催の水質問題と自然環境保全の重要性」2024.9.28配信
パリオリンピック・パラリンピックでは、セーヌ川でのスイムマラソンやトライアスロン競技において水質問題が大きな話題となりました。特に、都市部の大河川や湾では、水質の維持が重要な課題となっています。同様に、東京オリンピックでもお台場での競技時に水質の不備が指摘され、健康リスクに関する懸念が広がりました。メディアのインタビューに対してお台場では、選手たちから「水が濁り前が見えない」「足元がヌルヌルする」「臭いが気になる」といった具体的な不満を聞いていたにもかかわらず、私自身、「透明度がもう少し高ければ良いですね」と控えめなコメントをしてしまいましたが、今思えば、より明確に問題を提起すべきだったと反省しています。選手たちの声を正確に伝えることが、大会運営の改善に寄与する重要なステップであり、競技の公正性や選手の健康を守るためには、より踏み込んだ発言が求められることを実感しました。主催者として、都心部での大会開催には話題性やアクセスの良さといったメリットが多くある一方で、水質や環境保護に対する懸念は常に存在します。競技場としての「セーヌ川で泳ぐ」「お台場で競技する」といった特別な体験は、多くの選手にとって魅力的ですが、その背後で自然環境に対する負荷が増大していることも忘れてはなりません。世界の他の大都市では、すでにいくつかの取り組みが始まっています。たとえば、ニューヨークのハドソン川周回スイムでは、参加者に感染予防接種を推奨し、水質に関する事前の通知を行っています。オペラ座で有名なシドニー湾では、浮遊物の多さを公表し、選手に適切な注意を促す取り組みが進められています。オープンウォーター競技を安全に開催するためには、より持続可能な水質管理が求められます。特にセーヌ川の観光船やお台場の屋形船の数が増え、水質に悪影響を与える要因が複合的に絡み合っています。これに対して、自治体や関連機関と連携しながら、競技前後の水質調査を徹底し、改善策を講じることが求められます。都市部での競技開催は話題性だけでなく、安全性を確保することが不可欠です。
オープンウォータースイミングの魅力と広がり
オープンウォータースイミングは、川・湖・海などの自然水域で行われる長距離水泳競技です。この競技は、自然環境の中で行われるため、プール水泳とは異なる戦略や準備が求められます。選手は、水流や風、波の影響を受けながら泳ぐため、体力だけでなく、自然環境への対応力も重要な要素となります。
参加者の目的は大きく2つに分けられます。1つ目は、速さを競いタイムで上位入賞を目指す競技志向の参加者です。これらの選手は、日々のトレーニングを通じて体力を鍛え、自己ベストの更新や上位入賞を目指しています。2つ目は、自然体験型スポーツとして、完泳を目指しつつ自然とのふれあいを楽しむ参加者です。自然環境の中で泳ぐことを目的として、結果よりも過程を重視する傾向にあります。日本の各地には、有名な場所でなくとも風光明媚で透明度の高い美しいビーチが多数存在します。無理なくマイペースを守り、完泳を目指すことが主な目標です。このタイプの参加者は、リラックスした雰囲気でレースを楽しむため、年齢や性別を問わず多様な参加者が見られます。私どもの協会では、特に50歳台の参加者が多く、彼らは新しい地域を訪れて、その土地の風景や食文化を楽しみながら競技に参加しています。
協会の理念として自然環境に対する意識改革、「次世代の子供たちのために、地球のかけがえのない自然環境を保全・再生そして創生しながら伝えていく義務と責任を担っている」ことを参加する方々に啓蒙活動をしつつ、同時にオープンウォータースイミングの大会は、参加者にとっては人生の一部であり、健康的なライフスタイルを楽しむための手段となっています。
今後も、オープンウォータースイミングを通じて、さらに豊かな人生を楽しんでいただけるよう、参加者が自然と触れ合い、心身ともにリフレッシュできる機会を提供し続けることが、私たちの目指すところです。
(資料1)年代別集計一覧:JIOWSA2024年度レース出場者年齢別内訳
年代 男性 女性 合計
10歳未満 0 0 0
10~19歳 3 0 3
20~29歳 79 28 107
30~39歳 102 29 131
40~49歳 236 87 323
50~59歳 378 119 497
60~69歳 160 52 212
70~79歳 33 15 48
80歳以上 1 0 1
合計 992 330 1322
一般社団法人日本国際オープンウォータースイミング協会 理事長 篠崎豊
https://openwater.jp
2024年9月28日|キーワード:水泳、オリンピック