第213号「海の今を知る東京湾の取り組み」海上智央

第213号「海の今を知る東京湾の取り組み」2024.6.28配信

海の自然体験と切っても切れない海の生き物たち。
私たちが暮らす陸上とは異なる生き物たちとの出会いに、思わず大人も子供も顔をほころばせます。
生き物たちとの出会いは地域によって様々。
なぜなら日本の沿岸域は世界有数の生物多様性を誇り、地域毎に見られる種類が変わるからです。
釣りをされる方ならイメージしやすいかもしれませんが、場所や時期だけでなくしかけを変えれば、釣れる魚がコロコロ変わるように、カニや貝、ゴカイなどの生き物も近隣の浜ですら構成種が異なるほど日本の海は豊かで賑やかです。
一方で、近年になって様々な水産物の不漁をニュースで見聞きするようになりました。
水産物は毎年の漁獲量のデータがあるので、過去と比較してどれくらい減少したのかを示しやすいのですが、食用でもない海の生き物は継続的に調べられていることが少なく、また一部の生物群に偏っているのが現状です。
会員の皆様でも自身が活動する海のフィールドに今どんな種類の生物がどれくらいいるのか、現状を把握している会員は少ないのではないでしょうか。
そんな中、東京湾では2022年度から湾内の沿岸施設や地域NPOに声をかけて、それぞれが持っている現場で1年間の間に確認した生物をとりまとめる活動が始まりました。
この2年間で確認した種類はのべ799種類。
かつて豊かな海から死の海になったと呼ばれた東京湾。今でも驚くべき多様性を持つことが分かりました。
また各地の報告を解析すると24か所の報告箇所のうち20か所からアサリが確認された一方で、江戸前の寿司ネタの1つバカガイは5か所のみに留まったり、ハゼ釣りの餌としてよく利用されていたヤマトカワゴカイ類が1か所でしか確認されていないなど分布の偏りも明らかになりました。
本取り組みの詳細については以下の報告書をご覧ください。
「東京湾生物情報とりまとめおせっ会」による取組 https://www.env.go.jp/content/000216922.pdf
2023年に14の施設・団体が実施した24か所の調査結果の取りまとめで、私も報告者の1人として参加するとともにとりまとめに少し協力しています。
このような取り組みはまだ手弁当で進めているのが現状ですが、今この海に何がいるのかを知る・学ぶ・集める上で1組織ではなく、同業他社や関係者で進めるユニークな取り組みだと思います。
今後も他の海域の取り組みも参考にしながら持続可能な体制で続けていけたらと考えています。


(株)自然教育研究センター(CES)インタープリター/CNAC理事 海上智央
https://www.ces-net.jp/
2024年6月27日|キーワード:海、生き物