第160号「あの台風から4か月 南房総の森の今」神保清司

第160号「あの台風から4か月 南房総の森の今」2020.1.30配信

 

昨年、千葉県が襲われた猛烈な台風による被害について日本中から多大なご支援をいただきました。おかげさまで少しずつ復旧しています。改めて御礼申しげます。

私が運営する南房総国定公園大房岬では、猛烈な風によって数百本の樹木が折れました。4月半に渡り、ボランティアさんの力も借りながら相当量の風倒木を伐採してきました。今まで、樹木に覆われて鬱蒼としていた暖温帯の森の様相は一変し、青い空と青い海がどこからでも見えるようになるくらい、山が透かれました。陽の光が差し込むようになった林床には、数十年?数百年?眠っていたであろう木々の種が発芽し真冬だというのに一斉に芽吹いて生存競争をスタートさせています。

南房総の多くの山で木々が折れ、それらの処理は進まず、傾斜地では腐葉土も流れ表層も露になり乾いてきます。おそらく被害を受けた山の保水力は低下し、いつしか海中に湧き出す湧水の質と量にも影響があるでしょう。

たちも提唱するように「森は海の恋人」といわれます。南房総では人間が植えたマテバシイと杉の単一的な森が、山頂までその多くを占めています。他地域同様、台風以前から森を世話する人の手が入らなくなって週十年経過し、腐葉土がフカフカしないような不健全な土壌で、ただ大きく育っていた場所も多いのが現実です。ですから病気にやられていたり根が浅かったりしたことも、被害が拡大した一因と考えられています。

この事態をただ只嘆くだけでなく、倒れた木々を木製品やバイオマスエネルギーに活用する様々な取り組みも生まれつつあります。森づくりも水や空気や栄養がちゃんと海までつながる「道」を意識して里山づくり、海つくりに関わる人たちを増やしていきたいと思います。

 

CNAC副代表理事/南房総市立大房岬自然の家所長 神保清司
http://taibusa.jp/

2020年1月20日|キーワード:災害、自然