第92号「もしも海辺で地震に遭ったら」加藤利弘

第92号「もしも海辺で地震に遭ったら」 2014.5.30配信

CNAC会員の皆様、ずいぶんご無沙汰しております。

 以前、港湾局の国際・環境課(今は海洋・環境課)でお付き合いさせていただいた縁で、今も一般会員となっていますが、最近ではイベント等にも参加できず、ほぼ「幽霊会員」となってしまった加藤です。

 今は、港湾局の災害対策室にいますので、このコラムでは、津波からの避難について、少し述べさせていただきたいと思います。

 さて、皆様は、津波対策の原則をご存じでしょうか。

 比較的発生頻度が高い津波(といっても数十年から100数十年に1回)に対しては、防潮堤などの構造物で人命と財産を守り、東日本大震災のような1000年以上に1回という最大クラスの津波に対しては、避難対策等も含めた総合的な対策で最低限人命を守ることが目標になっています。

つまり、構造物で津波をくい止めるのは比較的発生頻度が高い津波までで、しかも目標ですから、すべての海岸で整備が完了している訳ではありません。また、最大クラスの津波に対しては、初めから侵入をくい止めることは諦めて避難することを想定していますので、津波の発生が予想されるときは、まずは避難を考えることが得策です。

 皆様は、多くの子供たちを連れて、砂浜や干潟、岩場などの海辺で活動する機会が多いと思いますが、活動の場はいずれも防護ライン(津波等から陸域を防護する防潮堤等のライン)の外側です。津波に直面する場所であり、守ってくれるものは一切ありません。

 このため、津波からの避難については、既に十分に検討されているとは思いますが、「釈迦に説法」となることは覚悟の上で、次の点に留意されることをお勧めします。

 ①津波の発生が予想される場合、気象庁から、0.2m-1mの場合は「津波注意報」、1m-3mの場合は「津波警報」、3mを超える場合は「大津波警報」が発表されますので、少なくともこの情報を直ちに携帯端末等で入手できるようにしておき、避難等の対応の目安にする。

 ②ただし、震源が陸地に近い場合、数分程度で津波が襲来し、この発表が間に合わない場合もあり得るため、海で強い揺れや弱くても長い揺れがあった場合は、直ちに活動を中止し、避難を始める。

 ③「津波注意報」でも、海の中では速い流れが生じるため、直ちに海から上がって防護ラインの内側に逃げ、「津波警報」や「大津波警報」の場合は、直ちに高台や避難ビルなど安全な場所へ避難する。

 ④最近では、避難経路や避難場所等を定めた津波避難計画を策定している市町村も多くなっているので、可能であれば事前に活動場所の津波避難計画を入手し確認しておく。

 最後になりますが、万一、海辺で活動している時に大きな地震・津波が発生しても、安全かつ確実に避難できるよう万全の体制を整えられるとともに、楽しい海辺の活動が、今後益々活発になることを期待しています。

国土交通省港湾局 加藤利弘

2014年05月30日|キーワード:震災