第100号「皆で海を楽しむことが子どもたちに美しい海を引き継ぐ。身の丈の活動を続けよう!」2015.1.30配信
第9回全国フォーラム&海辺の環境教育プログラム体験会レポート
1月17日、18日に愛知県豊橋市、伊良湖半島で開催された全国フォーラムと海辺の環境教育プログラム体験会の速報レポートです。詳細は、後日CNACのHPにアップされます。
NPO法人海に学ぶ体験学習協議会(CNAC)は、平成25年度から3年間、「皆で汗かく三つの広げよう運動」 (・活動を広げよう・仲間を広げよう・感動を広げよう)を展開しています。地元のNPO活動にスポットライトを当て、連携を深めていくため、前年の横浜に引き続き、第9回全国フォーラムを1月17日豊橋市で開催しました。また、活動を広げる一環として、環境分野の取り組みを強化するため、現在、環境教育プログラムの検討を行っており、1月18日に「海辺の環境教育プログラム体験会」エクスカーションto伊良湖を開催しました。
第9回全国フォーラムでは、「子どもたちに美しい海を引き継ぐために」をテーマに、約60名の参加を得て、キーノートスピーチ、三河湾を中心としたNPOの活動事例報告、パネルディスカッションが行われました。
フォーラム冒頭、主催者挨拶として、三好利和CNAC代表理事からは、「豊橋開催に関する中部地方整備局、豊橋市の協力に対するお礼、本日1月17日は阪神・淡路大震災から20周年にあたり、当時のNPO
の活動の紹介や災害時のコミュニケーションの重要性、子どもたちを中心に海離れを防ぐ今後のCNACの活動方針」等に関する主催者挨拶がありました。続いて、国土交通省小谷野喜二海洋・環境課長からは「自然体験活動は実際に体験することが重要で、港湾局として平成14年度から海辺の自然学校を展開。引き続き、CNACの三つの広げよう運動を支援していく」との来賓挨拶がありました。引き続き、豊橋市の大須賀俊裕環境部長からは、「西に三河、南に太平洋を望む豊橋市は海に関係深く、汐川干潟での渡り鳥観察やゴミゼロ清掃活動、表浜でのアカウミガメ保護・自然観察活動など様々な環境活動を実施。今回のフォーラムが今後何をすべきかのきっかけになることを期待している」との地元来賓挨拶がありました。また、急遽参加された東海ブロック選出の衆議院議員鈴木克昌様から、「蒲郡市長時代の命の海科学館の取り組みや子どもたちに夢を与えたいなど海への熱い思い」についてご挨拶をいただきました。
続いてフォーラムに入り、鈴木信昭 国土交通省中部地方整備局 三河港湾事務所長に、キーノートスピーチ「美しい三河湾を次世代に引き継ぐための取り組み」を行っていただきました。スピーチでは、三河湾海域環境の「昔」と「今」を紹介した後、中山水道航路の浚渫土砂を活用した干潟・浅場造成と三河湾の環境改善に向けた取り組みなどが紹介されました。中山水道航路の浚渫工事の際に発生する砂は、きれいな細砂で平成11年から人工干潟造成に取り組む(シーブルー事業)とともに、効果把握のためのモニタリング調査を実施し、生物層が豊かになっていることを確認。現在、伊勢湾再生海域推進プログラムにおいて、「多様な生物がいきづくうみの保全」に向け、「貧酸素水塊」の抑制効果が期待できる「干潟・浅場造成」や「深堀跡修復」への取り組みが報告されました。
続いて、地元のNPOの活動事例報告に入り、CNACの会員である鈴木吉春氏(環境ボランティアサークル亀の子隊代表)からは、「きれいな海を守る心を広げるために」として、小学校のひとつのクラスから始まった小さな訴え「西の浜はゴミ箱じゃない」が紆余曲折を経て、他学校、企業、地域へ広がった取り組みが報告されました。永田桂子氏(NPOシーブリーズ三河湾代表)からは、「子どもと海に行こう」として、蒲郡で展開している環境チャレンジとその進化形であるジュニアシーレンジャーの取り組みが報告されました。子どもたちの本来の力を引き出すことにより、ゲームでは得ることのできない本来の子どもの笑顔を生み、それが大人の喜びになるという循環が重要との指摘がありました。CNACの会員である村上
廣氏(NPO法人伊勢湾フォーラム理事長)からは、「美しく豊かな伊勢湾と活力あるみなとまちの実現に向けて」として、伊勢湾を舞台にしたNPO法人伊勢湾フォーラムの活動紹介が行われました。人と森・川・海の連携による伊勢湾の再生への取り組み、干潟の現地見学や貝がら工作会等の実施による人材育成、中川運河のドラゴンボートレース大会など人と海を繋ぐ取り組みなどが報告されました。岩井克巳氏(NPO法人環境教育技術振興会理事)からは「近くて遠い大阪湾」として、大阪湾の環境の現状、「近くて遠い大阪湾」を「身近な大阪湾」に取り戻すための生き物観察会やワカメを作ることを発端とした大阪産(もん)定食へのチャレンジなど様々な活動が報告されました。渡邊幸久氏(あかばね塾うらしま隊)からは、「アカウミガメと美しい砂浜海岸を守る」として、地元の仲間と始まった環境やコミュニティを取り戻す活動や24年間続いている渥美半島表浜のアカウミガメの産卵の見守りの取り組みや苦労話が報告されました。
続いて、小池 潔氏(CNAC副代表理事)をコーディネーターとする事例報告者5名によるパネルディスカッション「子どもたちに美しい海を引き継ぐために」が行われました。ディスカッションでは、個々の海との原体験と現在の活動とのかかわりや環境学習に当たってのプログラム作りのノウハウなどが議論されました。その中で、子どもたちに美しい海を引き継ぐためには、「美しい=青い海ではない、特性に応じたものこそが美しさ」、「教えるのではなく自分自身が楽しいと思っていることをやっているだけ。それが子どもに伝わり、大人に還ってくる」、「活動を長続きさせるためには、1人でやろうとしない、主役は皆である」「背伸びはするが、爪先立ちはしない、身の丈の活動が重要」等の意見が出され、会場を埋めた出席者に多くの気づきを与えるとともに共感を呼んでいました。
神保清司CNAC副代表理事から、「地域ならではの海で活動されている皆様の話を聞いて、今後の活力、勇気をいただいた。楽しんでなければ、活動は続けられない」との閉会挨拶の後、参加者全員で記念写真を撮り、来年のフォーラムでの再会を誓い合いました。その後、近くの「美食酒家だいこん屋」で、約40名の参加を得て交流会が開催されました。塩田昌弘 中部地方整備局 港湾空港企画官の乾杯を皮切りに、本音トークが炸裂し、異常な盛り上がりを見せました。交流会終了後も豊橋の夜はまだまだ続く・・・。
翌日の1月18日は、「海辺の環境教育プログラム体験会」エクスカーションto伊良湖が開催されました。当日はフォーラムで事例報告された亀の子隊の定期活動日にあたっており、フォーラム参加者のうち19名が西の浜のクリーンアップ活動に加わりました。豊橋駅前から借り上げバスで朝8時に出発し、冬晴れの日差しの中、車中から海浜やキャベツ畑を眺めながら、10時に現地到着しました。そこで、亀の子隊の皆さんと集合し清掃活動を開始しました。はじめに、田原市立衣笠小学校の児童による分別等ゴミの拾い方の説明を受けた後、一時間ほど各自ごみと格闘しました。
亀の子隊の鈴木代表によると「この時期は、西の風が強くごみが集まりやすい一方参加者が少なくなるので大変だ」ということでした。実際に参加してみて、あらためて強風下、過酷な作業だと実感しました。浜には魚網などの大物のゴミからペットボトル、ビン・カン、サンダル、携帯ライター、梱包用のバンド等ありとあらゆるゴミがあり、いつまでたってもゴミはなくならないし、腰は痛くなるはで、時間を区切っていただき助かりました。
当日の参加者は37人、ゴミの総重量470kg、ペットボトルのキャップの数380個でした。このキャップはワクチンの購入資金への支援にまわすそうです。参加者の中には、小学生から活動を続けている中学生らの姿があり、17年間に及ぶ活動の歴史と蓄積を垣間見ました。
クリーンアップの後、会場を伊良湖の休暇村に移動し、菜の花や大アサリなど地元食材を用いたランチバイキングを堪能した後、休暇村のセミナールームで、「渥美半島の自然&漂着物」に関するワークショップをあかばね塾の渡邊幸久氏を交えて開催しました。半島の豊かな自然環境を定期的に観察することの重要性を感じるとともに、漂着物の対応、処理等について意見交換が行われました。その後、島崎藤村の椰子の実の舞台となり、近年、恋人たちの聖地として有名になった恋路ヶ浜を散策し、道の駅あかばねロコステーションを経由して、豊橋駅に戻り、東京等からの遠方組は、伊良湖を満喫して家路につきました。
前回の横浜と違って、今回は豊橋という東京から離れた場所でのフォーラムや環境体験学習会の開催でうまくいくかどうか心配でしたが、結局、それはまったくの杞憂で、中部地方整備局、地元豊橋市や地元NPOの支援のおかげで無事行うことができました。特に、豊橋市におかれましては、後援名義や来賓挨拶をいただくとともに、会場の確保や広報活動にご尽力していただきました。また、環境ボランティアサークル亀の子隊の鈴木代表には、前回の横浜でのフォーラム終了後から常に今回のフォーラム等の豊橋、伊良湖開催についてご指導いただきました。あらためて、関係者に深く感謝するとともに、来年度、三つの広げよう運動の最終年度を迎えるCNACの活動に、引き続きご指導、ご鞭撻をお願いいたします。(文責森川)
第9回 全国フォーラム担当理事 森川 雅行