第99号 千足耕一

第99号 2014.12.26配信

 12月初旬に福島県の猪苗代湖を訪れました。筑波大学の松田裕雄先生からの依頼で、猪苗代湖志田浜の再開発を実施するに当たり、水辺のアクティビティをどのように取り込んでいくのかということに対する意見を述べました。当日は、猪苗代湖の周囲の道路を1周しながら点在する浜やヨット係留等が可能な水辺関連施設を視察するとともに、湖岸からラバーボートに乗って近場の湿原を視察しました。冬ということで、ほとんど観光客にはお目にかかれませんでした。湖岸のイメージとしては、欧米の田舎に見られるような小さな浜と必要最小限の施設が備えられており、身の丈に合った開発が行われているという印象です。また、漁業の匂いが一切しないということも特徴であるように思われました。

 これまでの私にとって猪苗代湖はもっぱらスキー場から眺めるだけの存在であり、湖岸でボートを漕いだり泳いだりという経験はありません。知らなかった自然環境資源がたくさんあることに驚きました。志田浜は猪苗代湖畔の中でも栄えていた場所であるということでした。現在は、バブル時代に建設された湖畔の建物群はかなり老朽化しており、営業活動が盛んであるとは必ずしも言えない状況でした。このような状況や施設は日本全国に広がっているのではと危惧しました。

 さて、どのような活動が可能なのかというような事柄については、私よりもCNACの会員の皆様のほうがよほどアイデアや実際のプログラムをご存じであると思います。これまでに琵琶湖や沖縄、四国、九州などなど様々な場所の施設を見学させていただいてきました。その結果、施設も大切なのですが、そこでどのようなプログラムを展開するかということが重要であるという印象を持っています。再開発を行う際の視点をどのように持つべきか、考える必要がありそうです。再開発を実施する際には、大手のゼネコンが活躍することと思います。しかし、ただ箱モノを作るだけでは、バブル時代とそう変わらず、ただ施設が新しくなるだけです。そこで活動する人材の育成やプログラムの開発がなされなければ、人々を惹きつけ、多くの人々が訪れたくなる場所にはならないでしょう。

 そのような意味で、特定の場所を再開発する際に、その土地の歴史や風土を研究することや、その土地で活躍しているNPOや人材を知ることが非常に重要と考えます。また、それらの人材や団体に横串を入れる存在が非常に大切です。

 CNACは全国的なネットワーク組織でもありますが、組織に所属する人材が研修を行えるようなフォーラム等が開催されています。このような火を消さないよう、また、益々発展させてゆくことが水辺で活動する我々のために重要と思います。冬の時期は次のシーズンに向けての充電の時期でもあります。年度の総括を行い、次年度のより良い事業展開に向けて準備していきたいものです。拙文、どうかご容赦ください。

千足耕一(東京海洋大学,2014年よりCNAC理事)

2014年12月26日