第130号「海の活動団体が、森林整備、農業をはじめました」海野義明

第130号「海の活動団体が、森林整備、農業をはじめました」2017.7.28配信

 当団体は、海洋環境教育を中心に海洋の教育と保護を実践する組織として1985年に東京都三宅島で発祥しました。2000年の三宅島火山噴火全島民避難によって、2002年まだ火山活動避難中に神奈川県三浦半島葉山町に拠点を移し、2017年現在は、葉山(三浦半島、相模湾)と三宅島を中心に全国でも(時々海外でも)海洋・環境・自然・地域教育を展開しています。
 これまで海洋、海辺を中心とした活動でしたが、近年、地域教育を展開するに当たり海につながる川・森の活動が少しずつ増えてきました。森で活動を始めて見ると、ここ三浦半島、葉山の森の荒廃は大変な状態にあり、森川海の連関が取りざたされる社会情勢もあり、これは森をどうにかしなければならない。と、三浦半島で自然保護・環境教育・エコツーリズムを推進している12団体の連携組織「三浦半島自然ふれあい楽校」の団体メンバーとなり積極的に森林整備、里山保全再生活動に取り組んできました。活動してみると森には、海や川には無い(流木が無いわけではありませんが)、燃料と建材という暮らしに欠かせない要素を生産する場で、特に、間伐除伐の材で薪づくりを行い、薪炊きかまどで野外調理をし、火の暖かさと料理のおいしさを体験すると、とても森の恵みの豊かさを感じます。拾ったドングリでおやきを作ったり、ほだ木に菌駒を打ち、栽培したキノコで炊き込みご飯作ったりすればなおさらです。広葉樹、特に落葉広葉樹の森は腐葉土層が豊かで、川に良い栄養が流れ、その先の海に良い栄養を供給します。薪、炭を生産し、キノコを植えるほだ木生産の森、人の暮らしを支える落葉広葉樹の里山は海にとても良いのです。
 放置竹林の問題も大変で、山は竹にどんどん侵食され、自然森林が竹林に置き換わりつつあります。竹の純林ばかりが増えてしまうと生物多様性に関しては大問題です。3年前から竹林整備も始めました。これも、大量のタケノコが入手できるという、美味しいおまけつきです。子どもも大人もタケノコ掘りは夢中、良い体験活動の場もできました。竹で飯盒、箸、しゃもじや食器を作ったり、と、物づくりにもつながっています。
 森、竹林が整備され里山再生が進めば自ずと海の環境が良くなるのでしょうか?いえいえ、簡単にはそうなりません。海の環境に大きな影響を与えるのは産業、生活、農業です。生活は各人、各家庭の理解と努力でなんとか、産業にはなかなか手が出せない。そこで、里山つながりの農業の改善に着手することにしました。三宅島生活で、自家菜園での30種ほどの野菜栽培と、アシタバ畑の耕作経験はありますが、業を目指すのは初めてです。田んぼと畑での活動を開始して2年目の全くの初心者ですが、この1年で栽培した野菜(ハーブ類含む)の種類は70種を超えました。見るも無残な結果から、大収穫までまちまちですが、完全無農薬の有機栽培か自然栽培(不耕起)で行っています。虫に食われザルのような穴だらけのキャベツだったり、ニジュウヤホシテントウやカメムシ類の繁殖場と仮したり、毎日何十匹もの青虫や夜盗虫の退治や雑草取りに追われたりと大変ですが、安全で美味しい野菜を子どもたちに食べさせたいと協力を申し出てくれている参加者のお母さんたちの手を借りながら頑張っています。母と子・海のための畑「Ocean Family Mama’s Farm」として始動しました。こんな菜園が増え、農薬、化学肥料不使用の、極力海に環境負荷を与えない農業が増えればいいなと考えています。海の環境のために、自分の口に入り、体を作る食物と、海に流れる水循環が同位と考えられる人を増やしたいと思っています。

CNAC理事/NPO法人オーシャンファミリー海洋自然体験センター代表理事 海野 義明
http://oceanfamily.jp/

2017年07月27日