第168号「“小さな里浜”から“大きな夢”を」2020.9.25配信
私たちが活動している唐津は、隣国である韓国と近いところに位置しています。そのためか、この数年で2回にわたり「済州毎日新聞(地方紙)」と「中央日報(全国紙)」という韓国メディアから取材を受けました。以下、その内容についてお伝えします。
・済州毎日新聞(平成30年11月28日 取材対応)
日本の小さな海岸線のまち「唐津」における海岸漂着ゴミの清掃活動に興味を持ったとのことで、取材を受けました。
韓国では、海岸ゴミ清掃は業者が行うそうです。私たちのように市民ボランティアや海でのイベント活動団体、国県市の行政職員、警察、海上保安部などを巻き込んだ“まちを挙げての清掃活動”は独特で、とてもユニークな印象を持たれているようです。
そこで、以前台風が過ぎたあとに私たちが行った清掃活動を例に挙げ、私たちの組織としての動きと連携の大切さを紹介しました。
①普段から海岸清掃を行っているボランティア団体から、台風直後の海岸の惨状が事務局に伝えられ、きれいな海岸にしたいとの要請が入る。
②事務局が現地を確認し、現状に応じた清掃作戦を立案する。
③協議会のメンバーである地元新聞社に協力を要請し、清掃活動の詳細(日時、場所、準備品、駐車場など)を記事として掲載してもらう。(もちろん掲載料は無料)
④大型台風であったため、おびただしい粗大ごみや流木が漂着しており、人力だけでは処理不能なケースであったため、まずは人海戦術でプラスチックゴミやビニールなどの人工的で軽量なゴミだけを拾い集める。つまり、漂着ごみの現場分別を実行!
⑤県に要請し、緊急事態として地元の建設業協会を動員し、重機を使って粗大ごみや流木を片付け、海岸線の美化に成功した。
このような動きができるのは、私たちの協議会が「市民団体」「企業」「行政機関」によって構成されているためであり、唐津式の海岸清掃システムとして紹介しました。
・中央日報(令和元年11月20日 取材対応)
世界中で懸念されている「海洋プラスチックゴミ問題」をテーマに、環太平洋の国々に同時取材が行われ、日本での取材は博多から唐津にかけての日本海側の海岸線が取材対象となり、その一つとして当協議会も取材を受けました。取材内容は“日本のプラスチックゴミの現状と問題解決への取り組み”という内容でした。
当協議会は、月に一回、海岸線の巡回及び危険漂着物回収を行っています。巡回を通してわかることは、玄界灘を介して隣接する韓国や中国からの海外漂着ゴミが多く、飲料水のペットボトルや食品ビニール袋はもちろんのこと、過去には医療用産業廃棄物等の明らかな海洋投棄と思われるものも確認できます。(逆に日本からのゴミが韓国や中国に流れて、迷惑を掛けていると思うが…)
このような経験から、私たちの海洋ごみ問題に対する基本的な考え方をお伝えしました。
①海洋ゴミは海の底から発生するものではなく、陸地のゴミが川に落ち、海に流れ込んでくるのが主な要因であることから、この問題を解決するためには陸からゴミの供給を絶つことが先決であるということ。あとはコツコツと根気よくゴミを拾い続ければ、いつか必ず海洋ゴミは消滅する。
②ゴミ問題解決に向けて定期的な海岸清掃活動は勿論のことであるが、私たちが一番力を入れていることは“子供たちへの意識付けと教育である”ということ。
この話をしたときに、記者の方が唸りました。なぜかと聞くと、以下のようなことを話されました。
“韓国では、より良い進学こそが一番の親孝行であり、ゴミを拾わせる暇があれば、塾に通わせるというのが一般的な考え方なのです”
学歴社会でありスパルタ教育の韓国における“ゴミ”に対する考え方が全く違うことに、私たちも驚きました。
私たちが子供たちに伝える環境教育コンセプトは、「ゴミを捨てる人はゴミを拾わない。しかしゴミを拾う人は決してゴミを捨てることはない」であり、これこそが世の中から海洋ゴミを無くす唯一の方法だと信じていることを伝えました。韓国の記者の方は…
“韓国でもそのような考え方が広まるように、しっかりと映像にして放送します”と約束してくれました。
(放送された映像はコチラ→ https://n.news.naver.com/article/025/0002960325)
私たちの、この“小さな里浜”から発信する“小さな運動”が世界中に拡散し、いつの日か“人類全てのきれいな里浜”となることを夢見て、これからも地道に活動を続けていきます。
唐津里浜づくり推進協議会 理事長 中江 章
2020年9月16日|キーワード:海ごみ、教育