第209号「日本とウクライナの若者が共に学び、交流する航海の記録」小原朋尚

第209号「日本とウクライナの若者が共に学び、交流する航海の記録」2024.2.29配信

 私が理事を務めている認定NPO法人ISPA Japanでは2023年7月25日から30日までの5泊6日の日程で、帆船「みらいへ」にて日本とウクライナの若者が交流する航海プログラム(ISPA Young Mariner Program)を開催しました。
日本からは長野県軽井沢町にある小中一貫校である風越学園の9年生5人が参加し、ウクライナからは今回のプログラムのために本国から来日した人や戦火を逃れて日本で避難生活を送っている人など10人が参加し、合計15人の“ヤングマリナー”による航海の模様を紹介いたします。
■DAY 1
午後1時に横浜港ぷかりさん橋に集合。緊張の面持ちの人や乗船間際まで(乗船中も)兄弟喧嘩する人、マスコミの取材にも物怖じせずスラスラ応える人など多様な15人が集まりました。
乗船後、避難訓練のあと離岸出港、船内ではさっそくトレーニー同士のミーティングが始まりました。乗船前からZOOMでのミーティングを重ね、オンラインではお互いに知り合っているものの、リアルな対面は初めてということで、この航海でやりたいことなどを話し合いました。
初日は横須賀沖にアンカー、明日に備えて早めの就寝です。
■DAY 2
2日目は横須賀沖から館山港を目指します。抜錨後、浦賀水道航路を航行しながらセイルを広げます。初めての日ウ共同作業、多少もたつきながらも無事にセイルを広げることができました。
午後、館山港夕日桟橋に着岸。市役所や観光協会の方々による大漁旗の出迎えを受け、入港セレモニーではウクライナ代表の日本語によるスピーチも。入港後は渚の博物館を見学し、デッキでは釣りも楽しみました。
■DAY 3
朝食後に出港準備を整えて館山港を出港し、大島の岡田港を目指します。
全員でセイルを張った後は、航海当直とロープワークに分かれて活動。初めての操舵、初めてのチャートワーク、初めてのロープワークと初めてづくしの3日目。
夕方、岡田港に入港着岸し、明日の上陸プログラムを楽しみに今日も早めの就寝。
■DAY 4
大島での上陸プログラムは海水浴!
港から徒歩でスグの日の出浜へ。夏場とは言え、海水温度が低かったらしく早々に退散。
正午に岡田港を出港し、オーバーナイトで沼津沖を目指します。
夕食後は初めての夜間航海当直、伊豆半島の街明かりに加えて星空と灯台、他船の灯火など、昼間とは違った華やかなナイトセーリングを楽しみました。
■DAY 5
航海5日目は沼津沖からのスタート。プログラムの最終仕上げはこれまでの経験を活かしてクルーの援助を受けずに自分たちだけで船を動かす「コマンドデイ」を実施。
船長役や航海士役などを決め、作業指示もテキパキと英語で下しながらなんとかセイルの展張に成功!!
方向転換にも挑戦するも、風が強く、波も高くなって来たのでコマンドデイをいったん中断し、清水港へ。港内でアンカー、穏やかな海域でコマンドデイの再開。さっそく自分たちで考えた方法で海へダイブ。マストからぶら下げたロープでターザンのごとく海へ飛び込む人も。
夜はフェアウェルディナーで、ウクライナ料理と歌で大いに盛り上がりました。
■DAY 6
航海最終日、船内を清掃して10時に清水港江尻ふ頭に着岸。
着岸後に今回の航海をふりかえりました。
航海中も毎日、ふりかえりを行い、時には1つのテーマに基づいてディスカッションするなど、同じ体験を経ながらも違った捉え方、感じ方をする人がいることを知り、この地球上では本当に多様な価値観をもつ人々が暮らしていることを実感した日々でした。
夏の日の夜、海上から見る花火もまた楽しみの一つとして捉えていた日本人の若者に、ウクライナ本国から参加したトレーニーの1人が言った一言が強烈でした。
「花火は空襲を思い出すから見たくない・・・」

NPO法人 ゼリ・ジャパン 帆船みらいへ船長
小原朋尚 https://www.zeri.jp/miraie/
2024年2月27日|キーワード:海洋