第196号「空港の脱炭素化と海辺の自然再生」田中知足

第196号「空港の脱炭素化と海辺の自然再生」2023.1.27配信

 一般会員の田中知足と申します。CNACが設立された2006年当時に国土交通省港湾局で勤務し、海辺の自然体験活動を担当していたご縁で本稿を寄稿する機会をいただきました。当時の職場の仲間は、森川雅行さん(CNAC顧問)、繁本護さん(前衆議院議員)、小野太士さん(九州地方整備局)、港絢子さん(CNAC事務局長)で、皆CNACの大ファンです。
 さて、その後の私の仕事は、海から陸に上がり更に青空を見上げながら空港に関する業務を国土交通省航空局で担当しています。そのような中、最近小職が空港業務に携わるにあたり、海辺の自然再生に若干関係する機会がありましたので概要をご紹介します。
 その契機となったのは気候変動問題への対応です。国際的に脱炭素化への取り組みへの関心が高まるなか、2022年10月の国際民間航空機関(ICAO)総会では、国際航空分野における脱炭素化の長期目標として「2050年までのカーボンニュートラル」が採択されました。また、日本国内に目を転じると、これに先立つ2022年の通常国会において我が国航空分野の脱炭素化を推進するために航空法等の改正法が成立し、その後、同法は同年12月に施行されました。
 このうち、特に空港分野について申し上げると、同法により各空港の空港管理者が空港脱炭素化推進計画を策定することができるようになり、推進計画が国土交通大臣の認定を受けた場合には航空法、国有財産法の特例を受けることができるようになりました。国土交通省航空局では、この推進計画策定の参考となるよう、「空港脱炭素化推進のための計画策定ガイドライン」及び「空港脱炭素化事業推進のためのマニュアル」を整備し公表しています。これらの文書では、空港の脱炭素化を推進するための方策を挙げていますが、そのひとつの事例として「ブルーカーボン」を取り上げています。ご興味をお持ちの方は次の国土交通省のホームページをご確認下さい。
空港脱炭素化推進のための計画策定ガイドライン (29頁~)
空港脱炭素化事業推進のためのマニュアル (7-19頁~)
 空港の周辺地域は、航空機による一定の騒音があり、空港の保安を確保する必要があることなどから自然体験活動の場としては必ずしも適当な場所ではないかもしれませんが、これらの取り組みは海辺の自然再生にも資するものとご理解いただければ個人的にはありがたく思います。
 本稿執筆時には、新型コロナウイルス感染症を感染症法上の5類に移行する検討が始まるといった報道がなされています。2023年が、ウィズコロナのもと多くのみなさんに海辺の自然体験活動を遠慮なく思う存分に楽しんでいただける年になるよう心より願っています。
元 国土交通省港湾局環境整備計画室総括課長補佐 (現 国土交通省大臣官房技術審議官(航空担当)) 田中知足

2023年1月24日|キーワード:環境