第190号「すべては海につながっている」2022.7.29配信
私たちの活動は、東日本大震災の復興支援ボランティアから始まりました。2011年震災発災当初は、瓦礫の撤去や海からのヘドロ出し作業。その後は半島部での漁業支援に移り、金華山と云う離島で観光復興のお手伝いを続けて来ました。
その過程で得た「復興は持続可能な社会システムを基本としなければ、いずれは同じ混乱を繰り返す。」との気付きから、環境保全や根源的な地域文化の継承に軸足を置いた活動へと進み、2017年から洗剤などの使用済み詰め替え袋のリサイクルに関する実証実験を担当。そこで得た知見を基にした小学校での環境授業やSDGsとの関連性ついての学習企画を展開しております。
そして、この学習企画からは、参加者自らの生活域である牡鹿半島での伝承文化や食、先祖から受け継いだ自然環境を再発見するフィールドワークが組織され、そこで収集した情報を体系化して”郷土の海辺の魅力と可能性”を体験ツアーとして発信。都市部からの多くの参加者を得る様になっております。
震災当初、町中を覆ったヘドロに恐怖とも云い得る不安を感じ、瓦礫として積み上げられた生活に係わる破損した品々の中に”大量生産大量消費”が社会に及ぼした”持続不可能な実相”を感じ取り、震災からの復興と云う未来を考察するにあたっての暗中模索が、環境保全を中心とした活動を導き、持続可能な社会に向けた様々な具体行動に至っております。
その具体行動は日を追うごとに多様性を帯びて、郷土食として利活用される海藻の調理法の収集と健康との関連性調査。使われなくなった大漁旗や漁具、海辺の漂着物やシーグラスを用いた工芸品の製作とワークショップ。震災時を想起しての自活の為のエネルギー確保と、その活用法の講習会へと広がっております。
また、リサイクルに関する実証実験からの経験は、ソーラーパネルの廃ガラス部分の再生と、そこで得られる人口珪砂を用いた干潟や浜辺の再生についての取り組み(令和2年度の環境技術実証事業)に生かされ、企画全体のコーディネートを引き受けております。
これに関連して、この夏は各所の浜辺を回って磯焼けや砂浜の減少についての調査を行い、人口珪砂に求められる有用性についてのレポートをまとめています。
こうして、東日本大震災に際して受けたヘドロによる衝撃は、持続可能な社会を目指す行動を育み、十余年の歳月を経て … 螺旋を描きながら、綺麗な海を取り戻す活動へと回帰しています。
一般社団法人サステナブルデザイン工房代表理事 押切珠喜
http://susdeko.main.jp/
2022年7月20日|キーワード:海、震災