第166号「きれいな海を守る心を広げるために」鈴木吉春

第166号「きれいな海を守る心を広げるために」2020.7.31配信

 「西の浜はゴミ箱じゃない!」と活動を始めて20年が経ちました。2020年6月現在で、参加者は2万592人、ゴミの総重量は74,920Kgとなりました。活動を始めた当初、その活動は認められることはなく、それどころか、どうしてそんなことをやるんだ、という風潮さえありました。
 しかし、東日本大震災で、大量のゴミが流出し、アメリカまで辿り着いたゴミもあったと、話題となりました。そして、近年では、海洋プラスチックゴミの問題がクローズアップされています。その中でも、ウミガメの鼻にストローが刺さった写真は、世界に衝撃を与えました。釣り針がひっかかった海鳥、ロープが絡まったアザラシ、死んだクジラのお腹から大量のビニルが検出された、など海洋生物の被害が広く報道されるようになりました。
 こうした海洋ゴミの問題は、多くの人が海に目を向けるきっかけとなったと思います。
 4月、コロナの影響で活動が中止になった浜に行ってみると、「郡上」と書かれたコンテナがありました。JAめぐみのものでした。確認のために連絡をすると、一昨年の豪雨の時に流れ出たものだとわかりました。
岐阜県の郡上八幡市は、西の浜から200Kmほど離れています。コンテナは、大雨のために郡上市内を流れる吉田川に流出し、長良川の本流に入り、伊勢湾まで出て、西の浜に流れ着いたようです。コンテナにとって、長い旅でした。
 昨年10月には、揖斐川中流に立てられていた西濃漁業組合の看板がありました。数年前には土岐市のコンテナを見つけたこともあります。もちろん、これらは意図的に捨てられたものではなく、大雨などで流出したものです。
 考えてほしいのは、こうしたコンテナなどが流れてくるということは、ペットボトルやプラスチックゴミなどの小さなゴミが、内陸の街からも流れてくる可能性が高いということです。
 西の浜で拾うゴミの多くは、ペットボトルを筆頭にプラスチックゴミです。コンテナの破損した一部だったりします。ガラス瓶や発泡スチロールも多くあります。そうしたゴミを分類すると、「事業系」「漁業系」「生活系」と分けることができます。
その中で、多いのは「生活系」です。つまり、「家庭ゴミ」です。サンダル、靴、バケツ、鉢、プランター、台所洗剤の容器、スプレー、ヘルメット、オモチャ、人形、商品が入っていた袋、などなど。おむつや浣腸もありました。
 事業系では、工場で使うコンテナ、長いパイプ、数メートルもある蛇腹の黒い管、大きなビニルの緩衝材、オイル缶、車のバンパーもありました。溶かして固められたプラスチックの塊、何だかわからない電気製品の部品、
 漁業系では、漁網、黒やオレンジの球体の浮き、紐で結んだペットボトル、養殖の網を留めるリング、係留用ロープ、船専用の電球、などなどです。
こうしたゴミを見ていると、多くは、大雨で流されてしまったとか、何らかの要因で流れ出てしまったものがほとんどだと思いますが、時には、冷蔵庫や洗濯機の外側だけとか、大きな看板。タイヤもあり、意図的に捨てられたものもあるように思います。

 愛知県や名古屋市のイベントで、内陸の街のゴミのことを話すと、多くの人は「へぇー。」という表情をします。上流域から出たゴミが愛知県の最も南にある渥美半島の先端に流れてきていることが信じられないのです。海ゴミは、海に面した市町の問題、海に関わる人の問題だと思っている人も多くいます。
 街で、何気なく捨てたものが、いずれは、水路に入り、川から海に出て、遠く西の浜に流れ着くという事実を、もっと多くの人に知ってもらわなければならないと思います。

 きれいな海を守りたいと、西の浜で活動をしていますが、西の浜でゴミを拾っているだけでは海はきれいにならない、きれいな海を守る心を広げることが大切だということを隊員たちもわかっています。
 毎年、企業に向けて手紙を送る手紙作戦では、子どもたちが直筆で訴えます。ボランティア集会などでは活動発表をし、声をそろえて訴えます。

特別なことは何もしません。
必要以上に森を切らずに 森を守ることが、
森の生き物たちを守ることになるように、
川や海を汚さないことが 海の生き物を守ることなのだと信じています。
森や川や海は、私たちに多くの命を与えてくれます。
そんな 森や川や海を ぼくたちは
守っていかなければならないのです。
みなさんもきれいな海を守るための活動に協力をしてください。


私たちは、
ずっと遠い昔から どれだけ多くのものを
海からもらってきたのでしょうか。

食料としての魚、貝、烏賊、蛸、海草。
海草は 畑の肥料としても利用できました。
海の水からは 塩も作ることができました。

海は、
私たちが 生きていくために、
必要な 多くのものを与えてくれました。
そんな海に、
私たちの祖先は 感謝して生きてきたのです。

ところが、
いつの間にか、
海への感謝を 忘れてしまったようです。
台所からは 油が流れ、
要らなくなったものを
ゴミとして 平気で捨てていました。

海は すべての命の源です。
私たちは、大昔の人たちのように
もっともっと
海を 大切にしなければならないと思います。
そして、21世紀に生きる私たちは
きれいな海を守っていきたいと思います。


これからも、子どもたちと一緒に、きれいな海を守る心を広げる活動を進めたいと思います。

 

環境ボランティアサークル亀の子隊 代表 鈴木吉春
http://www.kamenoko.org/

2020年7月9日|キーワード:海ゴミ、教育、環境