第161号「全国フォーラム振り返り~海洋ゴミ問題を考える~」2020.2.28配信
勝どきにある私の仕事場は、豊洲に移転した築地市場の墨田川を挟んだ対岸にあって、部屋から川面が見える恵まれた環境にあります。目の前を観光船や屋形船が行きかいますが、その中に気になる黄色い船、これが、東京港の海面清掃船であったことをはっきりと知ったのは、「CNAC第14回全国フォーラム」の前日、1月31日(金)に、環境エクスカーションとして実施した、東京都の清掃船の活動状況視察の際でした(港湾関係者としてうかつにも・・)。
今回のエクスカーションは、東京都港湾局のご厚意により、視察のための船を出して頂き、船上より東京港の全体像を俯瞰するとともに、今回のフォーラムのテーマである海洋ゴミ問題の一環として、東京都の清掃船による海洋ゴミ回収の現状を勉強することができました。実際にゴミ回収を行う清掃船の活動状況を船上より視察した後、清掃船の基地港で、東京港の7隻の清掃船及び運搬船の活動状況のレクチャーを受けた後、実際の清掃船に乗り込み、船の構造や回収されたゴミを見せて頂きました。
ゴミを一見して、目についたのは、発砲スチロールをはじめとするプラスチックごみの多さで、東京港には、荒川(墨田川)、多摩川等の河川が流れ込むことから、海洋ゴミの多くが河川由来すなわち陸上由来であるとのこと。海洋ゴミ問題は、我々の生活態度の問題だということをあらためて認識させられました。
今回のエクスカーションは、船の定員の関係で12名と参加者が限られましたが、うれしいことに鹿児島県議会議員の方や現役の高校生の一般参加もありました。終了後は、恒例の「振り返り」が行われました。
翌2月1日(土)には、全国フォーラムが、「クジラが泣いている~海洋ゴミ問題を考える~」と題して、横浜日本丸メモリアルパーク内日本丸訓練センターを会場に開催され、約50名の方に参加頂きました。
概要は、2月17日付のCNAC会員向けメールに掲載記事が添付されていますので是非ご参照ください。
私の振り返りとして、1点だけ。
「ストランディング(stranding)」とは、本来は船の座礁を意味し、鯨類が生きたまま海岸に乗り上げて身動きがとれない状態を意味します。キーノートスピーチを頂いた、国立科学博物館名誉研究員の山田格先生によれば、日本周辺で、毎年300件を超えるイルカやクジラのストランディングが発生し、可能な限り現場に出かけて解剖等を行っているそうです。解剖等が、クジラ類の新種の発見や生態の解明につながりますが、相当昔からクジラ類の胃からプラスチック類が発見されていたそうです。
CNAC会員の皆さんは普段から、海で活動されています。その際に、イルカやクジラのストランディングに遭遇したら、国立科学博物館に連絡してほしいとのこと。研究者のネットワークを通じて可能な限り、現場で解剖等を行うことによりクジラ等の生態の解明等に役立つそうです。また、海洋ゴミが海の生物に与える影響もより明らかになるでしょう。ぜひ、CNAC会員の皆さんの協力をお願いします。
CNAC理事/(株)日本空港コンサルタンツ 代表取締役社長 池上正春
http://www.jacinc.jp/