第151号「地球を感じる体験」山本海

第151号「地球を感じる体験」2019.4.26配信

 みなさんこんにちは。一般社団法人スピリット・オブ・セイラーズの山本海と申します。
私たちの団体は2016年に立ち上げ、帆船を使用した海洋体験を提供する活動を行なっています。
私が19歳の時はじめて乗った帆船は「船は小さい地球」というコンセプトの船でした。
乗組員も含め、参加者も多国籍で構成され、普段の会話も日本語と英語、互いに教えあった多国籍な単語が混じるような場所でした。
最初は戸惑っていた私もだんだんと雰囲気に慣れ、仲間の一員として自然の力を利用し船を目的地まで進めることの魅力に没頭していきました。

「この船は小さい地球だ」と船長が言っていたのをよく覚えていますが、その時の私は「国際交流や世界の人々と互いの価値観を尊重し合う」というような理解でした。
それから17年、帆船に関わって行く中で、それは一つの側面でしかなく、自然の力を利用して人が協力し、自らの意思で海という大自然を航海すること全体が「地球と人の関係を感じること」ができる体験なのだと感じるようになりました。
帆船は風で走ることができる船です。しかし港の出入港や安全上どうしても化石燃料を使うエンジンに頼らなくてはなりません。海の上で生活するとゴミが出てしまいます。
水、食料、燃料には限りがあり、個人が自然のなかでそれらを手に入れることは困難です。しかし自然の力を利用し、私たちが協力し船を目的地まで 進めるためのアイディア、知恵は無限の可能性を持っていることを実感させてくれます。大海原で周りからは支援が得られず、船は問題を自分たちで解決して航海を続けなければなりません。厳しい状況だと思われがちですが、今の地球に暮らす私たちとなんら変わりはありません。
それは大航海時代、まだ電気も化石燃料にも頼ることができなかった時代に船乗りや研究者が帆船に乗り世界中をくまなく探検し世界の成り立ちや自然現象の謎を解き明かして地球を知ろうとした先人たちの歴史からも学ぶことができます。

帆船での航海は直接的な問題提起をできるような活動ではないと思っていますが、船に集まった人同士が互いの価値観・文化を尊重し理解しながら自然の力を利用し、航海を成し遂げることは人の成長を促し、生きる力と諦めないしなやかさを与えてくれる機会、何より自然と人との関わりを体験する機会を提供できる活動だと感じています。そして今、私たちの暮らす地球に起きている問題を感じることができる機会を提供できると思っています。

帆船の航海は船酔い・海への恐怖・長い時間(休み・休暇)などが参加への高いハードルとなり日本ではまだ認知された活動とは言えません。

森でのキャンプは元は野営です。ナイフ一本持って森で一晩過ごすことは相当のスキルと経験が必要ですが現在はたくさんの家族連れがキャンプを楽しんでいます。それを可能にしたのが整備されたフィールドと多くの指導員、入門的な書籍、体験活動、イベント、初心者でも扱える豊富な商品などだと思っています。海でも誰もが気軽に楽しめる、安全に体験できるキャンプ場のような海のフィールドを作りたいと考えています。
私たちは今年5月、参加者自身が帆船を操り、目的地のビーチを目指して航海をして、ビーチでキャンプ、BBQ、海水浴なども楽しめる1日日帰り体験から一泊2日の新しい海キャンプをスタートします。

環境教育や子供に対する環境保全活動のプログラム面でも「地球を感じる体験」として広がりを持って皆さんと是非協力していければ思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

一般社団法人スピリット・オブ・セイラーズ

山本海
HP https://spiritofsailors.com/
BLOG http://spiritofsailors.hatenablog.jp/

2019年4月4日|キーワード:海、安全、ヨット、体験